若い女性や高齢者に多い貧血の中で、鉄欠乏性貧血の頻度が一番多いと思います。「たかが貧血、されど貧血」です。 |
●鉄欠乏性貧血とは? |
血液の成分の一つに、赤い粒である赤血球があります。この粒の中にあるヘモグロビン(血色素)が、「減った状態」を「貧血」と呼びます。鉄分が不足した貧血を「鉄欠乏性貧血」といい、貧血の中では一番頻度の多い病気です。 一般的な「立ちくらみ」「めまい」を「貧血」状態と呼ぶ事もありますが、これは「脳の血流不足」の可能性が高く、医学的な「貧血」とは区別する必要があります。 |
● なぜ女性に多いのでしょうか? |
鉄は体内では作られず、「食事鉄」として摂取する必要があります。しかし、消化管からの食事鉄の吸収率は低く、1日に1mg程度しか吸収されません。 女性は生理により月の出血があり、せっかく吸収した十数mgの鉄が、出血のため体の中から無くなります。従って、生理のある年代の女性では、鉄欠乏性貧血や、貧血の一歩手前の「カクレ貧血」の方々が約半分と言われています。 |
● どんな症状がありますか? |
ヘモグロビンが少なくなると、酸素不足となり「息切れ」「めまい」「疲れやすさ」「動悸」などが出現します。舌のしみる感じ、口角炎、スプーンのように真ん中が凹んだ爪などの症状が出ることがあります 子ども等では、「氷」を頻回に食べる「氷食症」がでることがあります。 また、足の裏や足の中で、ムシがはっているような不快な症状が起こり、不眠となることがあります。 |
● 鉄剤を飲むと気分不良になります! |
不足した鉄を補う治療には、内服と注射があります。通常は、鉄剤の内服を50−210mgの範囲で開始します。しかし、1日に多量の鉄剤を内服すると、吐きけ。腹部痛など胃腸の副作用がでてきます。 従って私は、錠剤を1回50−100mgで「夕食の時、食事とともに」に内服することを勧めています。一日の吸収量が少なくても、その分長めに内服すれば、貧血は改善するからです。 |
● 「お茶」「コーヒー」の制限について |
以前は鉄剤を内服する時には「お茶」「コーヒー」を禁じたり、制限したりしていますた。 現在の鉄剤は「ゆっくり吸収」されるので、そのような制限は必要ないと言われています。 |
● 効果や内服期間はどれくらいですか? |
内服を始めると数週間で効果が現れ、通常は1−2ヶ月でヘモグロビン濃度は正常範囲になります。 しかし、その時点で内服を止めれば、また悪化します。鉄が体に十分蓄えられるまで内服を継続する事が必要です。かといって長すぎる内服は体に負担がかかる場合があります。 内服開始から数ヶ月後の血液検査で、鉄剤の中止可能時期を判断することが出来ます。 |
[個別の病気に関して]のページに戻る |